村上春樹的ドラゴンボール談義
「ゴクウの髪のボリュームってすごいわよね」女は首を振りながら言った。
「まったくもってすごいわ」
「僕も高校のときは彼みたいな髪型だったんだよ」と僕は言った。
「すごいわね。」と彼女は表情も変えずに言った。
「本当にすごい。」そしてまた耳を掻いた。
「尖ってたんだ、ちょうど…ゴクウみたいに」
タバコに火をつけることのようにこの話題を片付けてしまった彼女に僕はひどく裏切られた気分になった。
「今のシュンはちょうどあれね、クリリンに似てるわ」
「クリリン?」
「クリリン」
僕は首を振った。やれやれ、なんだってこんな薄暗いキッチンで僕はクリ呼ばわりされる羽目になったんだろう。
彼女はそれだけ言うとゆっくりと立ち上がりキッチンを出ていった。僕はその間ずっと、クリリンになった自分を想像していた。