スキマダイアリ

インドネシアでさまようリーマン

ケータイ小説に学ぶ

http://nkst.jp/vote2/novel.php?auther=20080001

http://alfalfa.livedoor.biz/archives/51366971.html

  • スイーツ(笑)」とひとくくりにして叩かれてるようだけど、個人的には嫌いではない。「恋空」のテンプレ『「ガッシ!ボカッ!」 アタシは死んだ。スイーツ(笑)』を最初に見た時は確かに吹いたけど、実際に読んでみるとあんな不自然な部分はそうそうないことが分かる。小説としてもワンセンテンスが短く、行間も広くとってあるのですいすい読める。叩かれることも多いが、あの軽めの文体がリアリティを増すのに大きな役割を果たしているというのがよく分かる。確かに緻密で繊細な描写は読んでいて心に滲みてくるものだが、実際に現実でいつもいつもそんな風に考えているかというとそんなこともない。いろんな思いがバラバラと千々に乱れ、飛び交っているはずだ。そういう意味で、これらのケータイ小説は従来の小説とは違った形をとっているが、より読者に共感を求める新しいスタイルの文学と言えると思う。カワイー女子高生とか女の子が綴る、という形を取っている以上、これが自然!むしろ素直な心情がそのまま発露されている、という点で世の男性はこれを大いに参考にして女性の理解に努めるべきでっす。ていうか「あたし彼女」の主人公可愛すぎ。ああ。みたいな。
  • まったく話は変わるが「恋空」を読む前に、ある女友達(以下A)から恋愛相談を受けていたことがあった。Aは大学で知り合った男と一年ほど付き合っていて結婚まで考えていたが、ある時その男の浮気が発覚。男に詰め寄ると、反省の様子を見せ、もうしないと約束。Aはそれを信じ、よりを戻すが実は男は調子のいい奴でそれからも二股を続け、しかも相手の女にも結婚をほのめかしていた。ぼくの考えからすればその時点で縁を切るべきだと思ったのだが、しばらくしてその事実を知ったAはそれでもその男が好きで出来ることなら結婚もしたい、と言うのだ。別れるなら別れるで、相手にはその二股の相手の女ともども幸せになってほしいということも言った。
  • これを最初に聞いたとき、まったくAの思考回路が理解できなかった。浮気していたときも平気で嘘をついていたらしいが、そんな人間、結婚したところでまた浮気すると思わないのか。いや、それ以前に調子のいい言葉で裏切られ、結婚という人生の重大事までエサのように使われて悔しくないのか。縁を切るにしても、相手が幸せになって欲しいなどと思えるものなのか。正直なところ、ぼくにはAが自暴自棄になっているようにしか思えなかった。
  • その後、しばらくしてその男が浮気相手の女に振られたという確かな情報が入ってきた。カレは飄々とAのところに戻ってきて「お前しかいない、結婚してくれ」と言ったという。Aに何度目かの相談を持ちかけられたとき、ぼくは誠心誠意Aのためを思って「縁を切れ」と言った。今までも相談されるたびにそう言ってきたが、毎回Aは「分かった」と言うが結局縁を切ることはできず、また別の機会で相談を持ちかけてくるたびに「やっぱり(ぼくは)正しかった。あたしはアホやなぁ・・」と悲しげな顔で言う。今回、相手が二股して両方に結婚を持ちかけていた、両天秤にかけるような真似をされたと聞き、ぼくは心底相手の男とそれにダラダラ付き合っているAにもキレていた。「今回も別れないんだったら、それは俺が理解できる次元の問題じゃない。縁を切れなかったら、もう相談してこないでくれ」と言った。Aの「うん、分かった・・。ありがとう」という返答に嫌な予感はしたが、やはりそれ以降Aからの連絡はなくなった。
  • Aはぼく以外にも数人に相談していたようだが、全員から「別れろ」と言われていたらしい。共通の友人にも意見を求めてみたが(本人の同意の下)、Aに共感する人間はいなかった。しかしそれからしばらく経ってから、たまたま、本当にたまたま「恋空」を読んだ。文体は最初はとっつきにくいと感じたが、慣れればすいすい読めるようになった。読み進めていくうちに、何かがスコーンと腑に落ちる音がした。Aに共感するようになったわけではないが、その考えは理解できるようになった。どうも説明下手で言葉では言えないのだが、「恋愛に対してこういう考え方もあるのか」と目から鱗が落ちた。
  • なぜこんなくだらない話を長々としているかというと、いくら自分ではフラットな考え方をしていると思っていても思わぬところに偏見というのはあるのだな、ということに改めて気付かされたからだ。政治学を専攻していれば、様々な対象へバックグラウンドや知識を得ることで、知らず知らずに自分が対象に持っていた偏った見方に気付かされることは多々ある。しかし、こんな日常の場面?でも知らず知らずのうちに自分の価値観が絶対だと決めつけ、他の価値観があることを否定してしまっていた自分がショックだった。普段はむしろ自由恋愛を嘯いているような自分だけに、存外に結婚に対しては保守的な部分があったというのもその一つだった。ぼくはAと会って理解できないと言ったことを謝り、それでもやっぱ相手をよく見て欲しいな〜とイランことを言いつつも、もし結婚するなら式には呼んで欲しいとも言った。Aは嬉しいのと泣き出しそうなのが混じったような顔をして、ありがとう、と言ってきた。ぼくは「恋空」に教えられたのだった。めでたしめでたし。スイーツ(笑)