スキマダイアリ

インドネシアでさまようリーマン

半沢直樹 ようやく見た

『オレたちバブル入行組』

言わずと知れた、池井戸潤によるドラマ「半沢直樹」の原作。職場でも人気で、後輩が「10倍返しだ!」と、上司の後ろ姿にこっそり言い放っているのをよく目にする。遅ればせながら、第5話にしてようやくドラマを見たのだけれども、これが予想外に面白かった。

 予想外、というのも『オレたちバブル入行組』は確かに面白かったのだが、読んだ当時は、同じ作者の『下町ロケット』・・・小規模ながら卓越した技術と開発力を持つ下町の製作所が、最新鋭のロケットのエンジンのコアとなるシステムを有し、それを巡って大手重工や政府やらが・・・という「日本のものづくり」を担ってきた人たちのアツい物語にハマって、他の作品に手を出していた時だった。いわゆる企業小説とは違うものを求めていたので、本書もテンポはいいし痛快だけどそれだけだな・・と感じていた。まータイトルもちょっとエンタメ系で、読みやすかったので気に入ってこのシリーズも含めて何冊か購入して読んだ。

 今回ドラマを見て、改めて『オレバブ』を読み返してみた。すると当時とはまったく印象が変わっていた。以前は主人公の半沢の顔がイマイチ浮かんで来なかった。銀行で働く動機もよくわからなかったことや、その「毒舌の論客」っぷりと、文章で書かれる内面の葛藤がどうも合わないような気がしていたせいかと思う。しかしドラマでの堺雅人の、少し微笑んでいるような顔でマジギレする場面があまりにも印象が強く、脳内に刷り込まれてしまった。そうすると、一気に小説の中の半沢もイキイキしてくるようになった。主人公が立つと、周りもそれに引きずられるように盛り上がってきて、読み終わったあと「あれ、こんな小説だったっけ??これ本当に読んだっけ?」と自問自答してしまった。

 決めゼリフなんかもほぼ原作通りで自分が読み飛ばしていたようなところが、ドラマではかなり印象的だった。なんというか「本を読む」ということが、どれだけ読者の意識に左右されるものかと改めて実感した。同時に、原作を映像に立ち上げる脚本家は、本当にすごい!